投稿者のコメント
私たちは、過去の出来事を後悔したり、未来を不安に思って動けなくなったりと、今ではない時間に気を取られがちです。しかし、過去も未来も実際には存在せず、すべては"今この瞬間"の積み重ねでしかない――このことを以前、本で学び、最近ようやく心から理解できました。 朝起きて、やるべきことややりたいことがたくさんある中で、今、何を優先すべきかを考え、ひとつずつ集中して取り組むことで、自然とスムーズに行動でき、振り返ると多くのことを達成できているという感覚が生まれます。 本作では、この「時間は今の積み重ねである」という気づきを表現するため、あえて描くのではなく、針を使って一針ずつ曼荼羅アートを彫り上げました。また、作品の手前には腰越海岸で拾ったマイクロプラスチックをあしらい、背景には江ノ島の裏道から木々の間に見える海の写真を使用しました。 マイクロプラスチックは、元々必要とされて生まれたものが、やがて不要となり海へと流され、今は私の手元にある――そうした時間の流れを象徴する素材です。人間の寿命は約100年ほどですが、プラスチックは自然界で400年以上も分解されずに残ると言われています。そして、今私たちが見ている江ノ島も、約7〜8万年前に海から姿を現したと言われています。 このように、地球上のあらゆる生物も無機物も、無限に存在するように見えて、必ず始まりと終わりがあります。後から振り返るとそれは一本の線のように見えるかもしれませんが、実際には無数の点の連なりでしかありません。私の手彫りの曼荼羅アート、マイクロプラスチック、そして江ノ島の自然という3つのレイヤーで、そんな時間の本質の表現を模索しました。

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